FIP治療情報

猫伝染性腹膜炎とA/G比率

こんにちは!今回は猫伝染性腹膜炎に罹ったという子であれば誰でも一度でも聞いたことがあろうAG比率についてお話ししようと思います。

血液内のタンパク質(Total Protein)のうち、アルブミン(ALB : Albumin)とグロブリン(GLB : Globulin)のバランスがどのくらいかということを確認するための数値です。

総タンパク質 = アルブミン + グロブリン
AG比率 = アルブミン ÷ グロブリン

アルブミン(ALB:Albumin)
 - 血液中に最も多く存在するタンパク質
 - ホルモンや栄養素など体にとって欠かせない物質の運搬する役割
 - 血管内の水分量の調節を行う役割

グロブリン(GLOB:Globulin)
 - 体内に侵入した異物を排除しようと働く抗体の働きを持っている

FIPを診断する時の一つの基準数値、FIP治療を終了時の最終検査でも確認される数値です。FIPにかかると低いA/G比率からFIPを疑う必要があります。0.8以上は安心、0.4以下は猫伝染性腹膜炎の可能性大

AG比率が低くなる原因はFIPになると、グロブリン(体内に侵入した異物を除去しようと働き)が高くなるため、グロブリン数値が上昇しやすくなります。

体内に炎症があまりない状態、または抗体が作られないほど抵抗力が無い状態ではAG比率が正常範囲と見える場合もあります。

FIPに感染すると体内に侵入した異物を除去しようと働きが高くなるため、グロブリン数値が上昇しやすくなると説明しました。グロブリン数値の上昇はFIPによるものだけではありません。FIPウイルス以外にも細菌や他のウイルスや原虫等、風邪、口内炎 等々様々な理由で上がります。

猫伝染性腹膜炎の治療中の猫ちゃんの体内は、FIPウイルスと戦うために免疫機能をフルパワーで使用したり、FIPウイルスの影響で免疫機能が弱くなったりの理由で、他の病気に罹りやすくなる傾向があります。

そしてFIP治療中間で行う血液検査結果では多少の数値の増減が見られます。AG比率が低い、グロブリン数値が高いという理由でFIP治療が上手くできていないと焦る必要はなく、食欲や活動量は治療前と比較してどうなのかを総合的に判断する方が良いです。

 >>> 写真の出典:https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/1098612X19825701
 >>> その他血液検査経過:FIP治療:GS-441524による治療経過まとめ

猫でんちFIP治療期間中のグロブリンの血液検査結果の推移
グロブリン数値の変化
猫でんちFIP治療期間中のアルブミンの血液検査結果の推移
アルブミン数値の変化
猫でんちFIP治療期間中のA/G比率の血液検査結果の推移
AG比率の変化

口腔内に炎症が出来た時に、よくFIPと混同しやすく、あるいはFIPの治療が思ったよりも上手くいっていないと思われがちです。

口腔内に酷い炎症(口内炎等)がある場合もグロブリン数値の上昇によりA/G比が低く出やすく、口の中の炎症により食欲の低下や活力が通常時よりも低いという猫伝染性腹膜炎と共通する症状があります。

FIP治療を開始したにも関わらず食欲や活動量が変わらない場合や悪化した場合、「投薬中の薬は何なのか」「投薬量は体重と症状に合っているのか」また「その他の原因が無いのか」を慎重に判断することが大切です。

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