この検査をして結果が出るとFIPと確定する方法はまだありません。そのため可能な限り多くの情報を集めて猫伝染性腹膜炎の可能性があるかどうかを見極める必要があります。
どうしても体調不良の原因が見つからない場合、FIPの可能性がある場合はGS-441524による診断も有効的です。GS-441524はFIPにのみ効果がある治療薬のため、GS製剤を投薬後に改善が見られればFIP確定とすることができます。
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ToggleFIPの診断に必要な検査
FIPを疑う猫ちゃんの様子
- お腹や胸が水風船みたいに膨れている
- 発熱、持続的な発熱(微熱)
- 無気力、元気・活力がない
- 体重減少
- 成長期(一歳頃まで)の体重の停滞
- 食欲不振
- 下痢・嘔吐
- 黄疸
- 貧血
- 眼球の異常
→ 眼の炎症により、眼球の色の変化・濁り・充血(ブドウ膜炎、房水フレア、角膜沈着物、網膜の異常 等) - 神経学的な異常
→ 普段と違う運動・身体機能の行動の変化(眼球の揺れ、ジャンプ不可能、引きずって歩く、痙攣、麻痺 等)
血液検査(CBC & Chemical)
FIPを疑う時、典型的なFIPの血液検査数値があります。FIPだからと全員が同じ血液検査傾向ではありませんが、FIPを疑う症状がある場合は追加で様々な検査を通して猫伝染性腹膜炎の可能性があるか検査するようにしてください!大部分の猫ちゃんは、なかなか改善しない貧血と続く発熱がみられます。
- 低いアルブミン
- 高いグロブリン
- 高いタンパク質
- 高い白血球数
- 低い赤血球数
- 高い好中球
- 高い胆汁
FIV / FELV テスト
- FIV(猫エイズ)
- FELV(猫白血病ウイルス)
上の2つの病気とFIPは症状が似ているため、まずはFIVとFELVテストを行い2つの病気の可能性を排除する必要がありますす。
RT-PCR
腹部や胸部に水が溜まっているのが発見された場合、体液のサンプルを抜き取り検査を行います。
FIPの一般的な体液の状態
- 高タンパク質
- ハチミツや藁のような、明るい黄色
- 粘度が高い
RT-PCR検査を通して、FIPウイルスが含まれているFCoV(猫コロナウイルス)のRNAを検出するテストです。
*血清や血液では行わないように推奨されています。また、検査に使用する機器の感度やウイルスの状態等で検査結果は左右されやすいとされています。
画像検査(超音波、レントゲン)
ドライタイプのFIPはウイルスによって影響を受けた臓器に病変が見られます。
腸間膜リンパ節、腎臓の肥大等の有無を確認します。
FIP診断のためのGS-441524投薬
ある程度FIPの可能性が考えられる時、外部検査によるRT-PCR検査の代案としてGSを診断目的としての使用が有効です。GS-441524はFIPウイルスのみ有効な治療薬です。
数回~2週間程度のGS-441524の服用を通して
- 良くなる様子が見られる
→ FIPと確定 → 治療を継続 - FIPではなかったと判断された場合
→ GSの服用を中止 → 猫ちゃんには害が無いことが確認されている
ウェットタイプとドライタイプの違い
一般的に猫ちゃんの体内に体液が溜まっているとウェットタイプ、そうでないとドライタイプと診断されます。
ドライタイプには、エコーやレントゲンで発見できるリンパ節の肥大等、眼球症状、神経学的症状が見られますが、ドライタイプの特徴的な症状かつ体液が溜まっている状態は「混合タイプ」と表現される時があります。
ウェットタイプとドライタイプを分けて何が違うのだろうと疑問に思う方も多いのではないでしょうか?単純に症状の種類を分けるだけではなく、各症状にあわせて投薬量が変わってくるため、うちの子はどのタイプなのか、どのような症状があるのか把握するのが大切です!
>>> ウェットタイプとドライタイプの違い
>>> 眼球症状と神経症状について
ウェットタイプ
ウェットタイプは心臓(心嚢水)、肺(胸水)、お腹(腹水)付近に水が溜まっているのが特徴的な症状です。
- お腹に浸出液が溜まっている場合
お腹が水風船のようにな見た目と触った感覚があります。 - 肺や心臓に浸出液が溜まっている場合
外見に変化がない場合があります。体液が多く溜まると、呼吸が早くなったり、かなり辛そうな状態になります。
ドライタイプ
ドライタイプは、体内に体液(滲出液)が溜まっていない状態のことです。
様々な症状が見られ、その症状が他の病気と同じという理由から、診断が難しいです。
- 単純なドライタイプ
FIPドライタイプの猫ちゃんは、無気力、発育不全、貧血等の体調不良が見られます。下痢や嘔吐がある場合も多くあります。
- 眼球症状を伴うドライタイプ
眼球疾患を発見した場合、ブドウ膜炎、角膜沈着物、眼球混濁等見た目で分かるものが多いです。
この場合注意したいのが、見た目で分かる眼球症状の判断も大切ですが、瞳孔の動きが左右対称かどうか等も確認することが大切です。
目の内部である眼球神経の方までウイルスが進行している場合、脳にまでウイルスの影響が行っている可能性もあり、神経症状に合わせた投薬量が必要なためです。
- 神経症状を伴うドライタイプ
ウイルスが中枢神経系け脳に影響を及ぼした場合、神経症状として、運動失調症、震え、発作、痙攣、眼球振盪(目が飛び出す場合も)等の症状が現れます。