猫伝染性腹膜炎ウェットタイプとドライタイプは細胞性免疫と体液性免疫の働きにが大きく影響することをお伝えしました。
さらに今回の記事ではドライタイプの特徴的な症状のうち眼球症状と神経症状がどうして現れるのか、理由をお伝えし、次回の記事で治療方法をお伝えしようと思います!
治療方法が気になるという方はこちらからご覧ください!
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ToggleFIPウイルスによる眼球症状と脳神経症状の関係
FIPを発症した際に腹腔内の臓器に損傷が見られる場合が多いですが、「どうしてFIPにはドライタイプとウェットタイプが存在するのかという」記事でお話した細胞性免疫が上手く作動しているかによって猫ちゃんの体内で損傷が見られる場所が変わってきます。猫伝染性腹膜炎ウイルスが眼球や脳に侵入することによって、ブドウ膜炎や痙攣そして身体の制御不能などの症状が見られるようになります。一般的なウェットタイプやドライタイプの治療とは異なり投与量等に気を遣う部分が多くなりますが、治療を行い元気になる猫ちゃんがたくさんいます。
多くの方が気になっているであろう「我が子はいつ良くなるのか?」ということについてですが、どこにどの程度の損傷や炎症が起きているかによって様々で、共通して言えることは治りはゆっくりということです。治療中に症状が完全に無くなる場合もあり、治療が終わってから症状が無くなったという場合もあります。
血液臓器関門
人間や猫ちゃんには長い時間をかけて発展させてきた独自の保護システムがあります。その中に血液臓器関門と言われる器官があります。これは対象の臓器の血管とその臓器の物質の行き来を制限する関所のような役割を果たしています。この血液臓器関門は通常の毛細血管とは違い、毛細血管の内皮細胞の周囲を密に囲んで必要な物質のみを通過させてあげるという役割を担っています。
この血液臓器関門は体の主要機関である脳(血液脳関門)や眼球(血液網膜関門)等に存在しており、ウイルスや通り抜けるのに制限がある物質が通過(浸透)することを防いでいます。この関所のような役割をしている器官ですが、関所を突き破られてウイルスが脳や眼球に侵入した場合は、免疫系が脳や眼球に侵入したウイルスへの攻撃が難しい状態にあります。
これにより脳や眼球では急速に病状が悪化してしまいます。さらにこの血液臓器関門の存在によって、FIPに使用される治療剤の通過も制限されることになるので、通常のウェットタイプやドライタイプの投与量では治療の効果が落ちるしかないという状況を作ってしまいます。実際に医学研究の難題でもあり、今現在もなお多くの医学的研究が進められています。
神経症状と眼球症状の猫伝染性腹膜炎
FIPのお話しに戻ると、FIPVによって脳神経や眼球が侵された場合は治療経過を注意して見てあげる必要があります。実際に治療を受けていた猫ちゃんを見ていても、ちょっとした投与量の変化で治療中の病状が大きく変化しているため一般的な症状よりも考慮してあげないといけない部分がたくさんあります。
次回は眼球や神経症状の治療方法について書いていこうと思います。使用するFIP治療薬によって特に経口薬の場合の投与量の計算方法は様々なため、必要な投与量については各販売会社や入手先にご確認ください。