FIP治療情報

FIPについてよくある質問集

猫伝染性腹膜炎の症状が現れている場合、検査結果を待たずに薬の手配および治療を開始することが好ましいです。▶▶FIP診断にPCR検査は意味がない!?

治療中の血液検査は、基本4週間ごとに行うことが良いです。胸水がある場合は、胸水がなくなるまでは2週間ごとの検査を推奨します。

血液検査ですべてのことを把握するのは難しいですが、定期的に検査を行うことで薬の増量の有無やタイミングの判断と治療終了可否の客観的な判断材料の一つになります。また、FIPによる免疫力の低下によって引き起こされるであろう病気の発見につながり、その病気の治療やサプリメント等の補助剤の服用によりFIPおよびその他の病気を安定的に治療を行うことが可能です。

~~~グロブリン数値を例にした治療経過~~~
例1) 6.5(治療前)→5.1(5週目)→4.5(10週目)→3.8(12週目)
=治療経過が良いと判断可能であり、食欲や元気があれば治療終了!

例2) 6.5(治療前)→5.1(5週目)→6.0(10週目)
=10週目の時点で他の炎症が無いか、数値が上がっている原因が無いかを確認する必要があると判断できる。体重の増減と食欲と活力を総合的に判断して治療の終了か延長かの決定が必要

例3) 6.5 (治療前、A/G 0.3)→5.5(12週目、A/G 0.5)
=グロブリン数値が高くA/G比率が低い。中間の検査数値が無いため改善して悪化したのか、治療初期からこの状態なのか判断ができない。延長を行うべきか、どのくらいの数値になったら延長治療が終了できるかの判断も難しい状態

血液検査(cbc、血液生化学検査、電解質)、腹部エコー、その他FIP治療前や治療中に気になった部分(治療を行った部分)の検査まで行えると良いです。

この猫伝染性腹膜炎治療12週目の検査は治療終了の判断を行うためではありますが、長期間の観察やケアが必要となるFIP治療を行った子のための現時点での状態をデータに残しておくことで今後に役立つことがあるためです。

観察期間中の血液検査は行うことが望ましいですが、注射がかなりストレスとなる猫ちゃんまたは獣医師が診察の結果血液検査が必要ないと判断した場合には無理して行う必要はありません。

しかし、観察期間中に継続的に活力や食欲の低下等の気になる点がある場合は血液検査を行ってください。

こちらの記事をご参考ください。 ▶▶血液検査用紙の見方

基本的に投薬時間は24時間ごと(毎日同じ時間)に行うことが望ましいですが、生活環境の変化等により投薬時間を変更したい場合は、1日に最大1時間ずつ徐々に変更していくことを推奨しています。1日に移動させる時間が短ければ短いほど良いです。

猫伝染性腹膜炎治療を行う際に重要なポイントは、各薬剤の主成分(GS-441524、モルヌピラビル、レムデシビル)の血中濃度を24時間一定にさせることです。

治療薬(ブランド)の変更は可能です。

変更時には変更前後の薬剤主成分の含有量の確認を行い、投薬量を一定にするように計算を行ってください。A社 30㎎/mlからB社 20㎎/mlの製品に変更する場合、体重あたり投与量は同じですが注射量は変更前よりも増えることになります。

また、稀なことですがブランド変更後に体調の変化が現れる子もいます。一時的で回復する場合は変更後の治療薬での継続で問題ありませんが、体調の回復が見られない場合は変更前の治療薬に戻すことを推奨します。そのため変更するからと変更前の治療薬を全て使い切るよりも少し薬を残してブランド変更を行うことが望ましいです。

GS-441524を使用した投与量の計算方法
体重(毎日測定) × 症状別推奨投与量 ÷ 含有量(注射薬確認)

GS-441524の症状別推奨投与量(販売会社によって異なることもあるので要確認)
– ウェットタイプ、ドライタイプ:6mg/kg
– 眼球症状:8mg/kg
– 神経症状:10mg/kg
– 神経症状等よりひどい場合:12~15mg/kg

例1) 体重2kg、ウェットタイプ、注射薬の含有量20mg/ml
=0.6ml投与(2×6÷20=0.6)

例2) 体重3g、神経症状、注射薬の含有量30mg/ml
=1.0ml投与(3×10÷30=1)

猫でんちの情報:体重4kg、投与量8mg/kg
薬A:含有量15mg/ml、残りの容量1.2ml
薬B:含有量20mg/ml、容量5ml

猫でんちは薬AからBに変更したいが、Aは1.2ml残っている状態
= 薬Aは1.2ml、薬Bは0.7ml投与する
 *注射時は別々の注射器を使用してください

~~~以下計算式~~~
猫でんちの1日の必要投与量:32mg
(4kg×8mg/kg | 体重×症状別推奨投与量)
使い切りたい薬Aの含有量:18mg
(1.2ml×15mg/ml | 残りの薬の容量×含有量)
1日の必要投与量から薬Aの含有量を引くと:14mg
(32mg-18mg | 1日の投与量-使い切りたい薬の含有量)
残りの必要投与量(変更後の薬Bの投与量):0.7ml
(14mg÷20mg/ml | 不足分の投与量÷新しい薬の含有量)

減量を行わず投与量は維持することが推奨されています。症状の好転が見られた投与量は神経症状や眼球症状がなくなっても治療終了まで維持するようにしてください。

獣医師等の相談なしにご家族の任意の減量が再発を引き起こす原因の一つであり、この場合の再発治療は一回目のFIP治療よりも難しくなることが多いです。

中性化(去勢・避妊)手術を行うのは観察期間終了後が望ましいですが、治療中または観察期間中に発情期が来た場合は、手術前検査にて問題のない検査数値およびFIPを疑うきっかけになった症状が改善している状態であれば、獣医師と相談の上で手術を行っても問題ありません。

FIP治療中に中性化を行う場合、FIPによる免疫の低下と手術による免疫の低下により体調に変化が見られる場合がありますので、術後は様子をよく見守ってください。また、術後の状態によりFIP治療期間を2週間ほど延長する場合もあります。

GS-441524の注射治療中の炎症の発生は、GS治療の唯一の副作用とされています。これはもともと粉状であるGS-441524を注射用に液体に溶かす過程の溶剤の影響です。注射に慣れている獣医師が毎日注射を行っても炎症が起こる可能性もあります。

たいていは消毒や軟膏等により自然と回復するため、必要に応じて診察を受けてください。
炎症を少しでも防ぐ方法(背中の除毛、注射部位、消毒等)がいくつかありますので、こちらを参考にしてください。▶▶注射治療時の皮膚の病変の予防と治療

UC Davisの臨床研究によると体重の増加が、FIPから回復しているかどうかの最も分かりやすい指標だとしています。特に成長途中の1歳前後までの子は急激な体重増加が見られ、成猫ちゃんのほとんどの子は病気以前の体重にまで回復する傾向です。

体重計測は投薬量の決定のため毎日行いますが、体重の増減傾向の把握は1週間の平均で行うのが望ましいです。

子猫ちゃんの場合:
体重が停滞していたり減少している場合、1日の推奨摂取カロリーを摂取できているのか確認してみてください。足りていない場合は強制給餌が必要になるため、その前に気に入るごはんやおやつは何なのか様々な飼料をテストしながらお気に入りを見つけて食べてもらうことが重要です。(体重が少しずつ増えてはいるが摂取必要カロリーが不足している場合は、偏食である可能性が高いです。)上記のことを試みても体重増加が見られない場合、薬の増加を考慮する必要があるかもしれません。

成猫ちゃんの場合:
病気前であったであろう時点の体重にまで回復以降の体重の停滞はよくあることです。血液検査が良好で食欲や活力がある場合は、体重が停滞しているからと心配する必要はありません。しかし元気がない様子が続いており体重が停滞している場合はFIP治療の効果を疑う必要があるかもしれません。

論文にて発表されたGS-441524を使用した治療の各症状が改善されるタイミングをタイムライン形式にまとめました。▶▶GS-441524治療のタイムライン

84日間の猫伝染性腹膜炎治療を終えられるかどうかの判断は様々な面から確認する必要があります。

①治療期間および投与量は十分であったか
②血液検査によるA/G比率等の確認&臨床検査(エコー、レントゲン等)結果
③現在の猫ちゃんの様子(特に体重増加が安定的であるか)
各項目の詳しい説明 ▶▶FIP治療終了の判断基準

GS-441524を製造・販売しているところによると再発率は5~10%と示されているところが大部分であり、各国のFIPコミュニティーが長年見てきた再発率は10%未満とのところです。

再発が起こる理由はいくつかありますが、臨床研究や現場での治療経験に基づいた標準治療をきちんと守ることで大きく再発の心配をする必要はありません。

猫でんち自身が今まで見てきて感じた再発が起こる理由として、「標準治療から外れた治療を行った」「治療効果が明確に立証されていない治療薬ブランドの使用」この2点の事例が多いです。

以下を守ったからと再発を100%防ぐことは難しいですが、治療期間や投与量、投与方法を守ることで大部分は防ぐことが可能です。

再発を防ぐために
 ①治療の早期終了
 ②任意での減薬
 ③正確ではない投薬量
 ④投薬時間のばらつき
 ⑤食欲に気を使わない
 ⑥FIP治療以外の必要な処置を行わない
詳しくはこちらから ▶▶FIPの再発率を高める要因

FIP治療においてステロイドは必要な時のみ使用することが大切です。この必要な場合とは、治療超初期時や口内炎等の症状がひどく生活に支障をきたす場合がある時のみです。FIP治療を焦点に当てた場合、GS-441524による治療だけでも症状は改善が見られ、ステロイドによる処置を行うことは推奨していません。

神経症状がある場合はステロイドにより神経症状を和らげると同時に薬の血液脳関門の通過を妨げることがあるため脳まで薬を届けることが難しくなります。また、FIPによって現れている症状がFIP治療薬によって緩和しているのか、ステロイドによって緩和しているのかの判断ができません。

ステロイドを使用中の場合は獣医師との相談の上、徐々に服用量を減らすテーパリングを行ってください。

猫伝染性腹膜炎治療中に神経症状や眼球症状が現れるようになった場合、ステロイドの投与を行うよりも、FIP治療薬の投与量が十分ではないため増量を行う場合がほとんどです。

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