FIP治療情報

FIP治療の核心まとめ

猫の病気猫伝染性腹膜炎の治療について、FIPの治療薬であるGS-441524やモルヌピラビル、再発耐性時の治療薬の紹介

FIP:Feline Infectious Peritonitis
Infectionを「伝染性」と翻訳した結果、猫伝染性腹膜炎と名付けられました。「感染性」と翻訳するのが妥当であったとされています。

FECVとFIPVの違い
FECV (猫コロナウイルス)の状態では伝染が可能だが、FIPV (猫伝染性腹膜炎ウイルス)変異体の状態では伝染性はありません。(理論的には伝染させることが不可能だが、可能性はかなり低い)

遺伝する可能性
FIP変異体に弱い両親から生まれた子はFIPに罹りやすく、FIPに感染した猫ちゃんは中性化(去勢・避妊)手術を勧められています。

参考資料>>>猫伝染性腹膜炎に伝染性はあるの?

● FIP予防注射は猫コロナウイルス(FECV)抗体注射
予防注射は存在はするが、予防接種をすることによって体内に猫コロナウイルスを保菌することになり、猫伝染性腹膜炎に感染する可能性を高めてしまいます。

● FECV保有≠FIP発症
FECVを持っているからFIPに感染と直結させることはできません。

● FIPの予防方法
ストレスが発生し得るイベントを極力減らすことですが、特別なイベントが無くてもFIPに罹ることもあります。

参考資料>>>多頭猫のFECV感染コントロールと抗ウイルス剤の使用について」「FIP予防に健康な猫へのGS-441524の使用は不適切

● 典型的なFIP血液検査数値
「低いアルブミン(ALB)」「高いグロブリン」「高いタンパク質」「高い白血球」「低い赤血球」「高い好中球」「高い肝数値」しかし血液検査が正常範囲内でもFIPの場合があります。

● 腹水と胸水の検査
腹/胸水や組織検査から猫伝染性腹膜炎ウイルスが検出されれば、FIPと決定可能です。しかし検出されなかったからとFIPの可能性を取り除くことは難しいです。

● ドライタイプのFIP
ドライタイプの猫伝染性腹膜炎の場合、エコー検査からリンパ節の肥大、腎臓リムサイン(腎臓の内側に白く浮き出たもの)、脾臓のハニーコムサイン等を確認できることが多いです。

● 類似症状から排除していく
FIPは他の病気と類似している症状が多くあります。考えられる可能性から容易に検査や処置できるものから取り掛かり病気の特定をしていく方法を行うことが大切です。

● GS‐441524を投与してみる
GS-441524を投与してみて、何をしても改善しなかった症状が改善傾向に見ることが出来たらFIPだと確定できます。

参考資料>>>胸水・腹水のリバルタテスト」「FIPの診断方法

● アメリカで開発された成分
アメリカのギリアドサイエンス社で開発されたヌクレオシド類自体で、FIPウイルスの複製を防ぐ抗ウイルス剤です。(エボラウイルス治療剤として開発されました)

● レムデシビルとGS-441524
COVID-19の治療剤として使用されたレムデシビルとほぼ同じ薬剤成分です。

● 認証されていない薬剤
FDA承認を経ていないため正式な製造と販売が不可能です。現在手に入れることが出来るGS-441524製品は大部分が中国で製造されており、ブラックマーケットとされています。

● GS-441524の副作用
現在まで確認されているGS-441524の副作用は、注射液による皮膚の炎症です。
GS-441524はFIPウイルスを除いた他の細菌性の病気には効果は無く、副作用も皮膚の炎症を除きありません。

参考資料>>>「」

● COVID-19の治療剤
新型コロナウイルス感染症の治療剤として開発されました。
人間用として製品許可が出ているため、容易に手に入れることが出来る、動物病院でも適用外使用(オフラベル)として使用可能、安い価格で手に入るというメリットがあります。

● モルヌピラビルの副作用
世界中より耳が折れる、抜け毛、肝毒性の副作用が報告されています。
一部の安価な製薬会社からは、GS-441524と宣伝しつつ製品単価を抑えるためモルヌピラビルも含有させていたという報告もあります。

● 再発、耐性治療への使用
GS‐441524と比較し再発率や完治率、副作用の点から、一般的にはGS-441524に耐性が確認できた時(ある一定の投与量を超えても改善が見られない)にGS製剤の代替として使用されています。

参考資料>>>FIP治療薬の低価格化への注意」「FIP再発、耐性の治療方法

● 胸水
肺への影響がある症状のため、呼吸が辛く、また血中酸素濃度が低い傾向です。酸素部屋の使用、胸水を少し抜く、ステロイドの使用を行います。
腹水は敢えて抜く必要はありません。むしろ腹水を抜くことによってショックが起こる場合があります。

参考資料>>>胸水と腹水の穿刺

● 肺炎
肺炎も呼吸と関係があるため、抗生剤の使用や酸素部屋の使用が必要です。

● 貧血
貧血数値がかなり低くい場合、輸血が必要です。

● 寄生虫
寄生虫が発見された場合、駆虫を行ってください。予防目的で行うのは禁止

● その他の治療
猫ちゃんの様子を見ながら必要と判断された治療は積極的に行ってください。

● l-lysineの服用
l-リシンには、アルギニンとの拮抗作用があるため

● fluoroquinolone系の抗生剤への注意
フルオロキノロン系の抗生剤の副作用に神経症状があり、神経症状がFIPによるものか副作用によるものかの判断を早くするために可能であれば避けることが、より迅速で安全な対応ができます。(副作用の観点から現在は1次抗生剤として使用する場合が少ない)

● 駆虫、予防接種
治療終了後、3カ月の観察期間の終了後に行うことが推奨されています。

● 中性化(去勢・避妊)手術
治療終了後、3カ月の観察期間の終了後に行うことが推奨されています。
ただし発情のストレスが中性化手術よりも大きいため、治療経過が良好な場合手術可能です。この場合、観察期に行うよりもFIP治療中に行い、手術後2週間投薬治療の継続が最も安全です。

● 24時間間隔と含有量を一定に保つ
24時間周期で、決められた含有量を体重に比例させて投薬をしてください。

● 治療から12週目
治療から12週間目に、治療を終了または延長の判断を行います。

● 84日の治療期間
臨床試験の結果より最も多くの猫の治療をできる期間として、84日が正式な治療期間と決められました。早く治療を終えるケースもありますが、この決定を根拠する正確なテスト方法はありません。

参考資料>>>「」

● 再発か否か
血液検査数値が正常でも再発、数値がいまいちでも元気に過ごすという子もいます。

● 正常なタンパク質数値
「アルブミン:3以上」「グロブリン:4以下」「A/G比率:0.8以上」が理想的。
しかしこの範囲を外れていても十分に正常な場合が多いです。

● 再発を疑う時
投薬終了後の発熱、食欲不振、活動性の低下等の治療前の症状が見られた時は、まず再発を疑います。

参考資料>>>「」

● 症状別推奨投与量
症状別投与量は「最低」投与量です。これ以上投与しても治療に問題はありませんが、これ以下の投与はウイルスを効果的に抑制することが難しくなります。

● 適正投与量と症状の改善
症状や体重に合った投与量で投薬をしていると、症状が早く改善します。改善が見られない場合は体重あたりの投薬量を増やすことを検討する必要があります。

● 体重あたりの投薬量の維持
FIPの治療中は体重あたりの投薬量を一定に維持してください。現在の投薬量で抑えられていたウイルスが投薬量を減らすと弱い抑制力に抵抗できるようになります。つまり耐性ができる可能性があるため薬の減量は危険です。

● 投薬量を増やすときは2~5mg/kg単位
少しずつ体重あたりの投薬量を増やすと、耐性がつく可能性があります。
一般的に増薬する時は2~5mg/kg単位で行います。また増量後は最低2週間程度状態を確認し、再増薬が必要か検討を行います。

参考資料>>>「」

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