FIP治療情報

FIP治療薬の投与量の増減

FIP治療はじめに投与量を増やし、症状が安定し始めたから1~3週目に各治療製品の標準投与量に戻すという方法を見かけますが、一般的には推奨されていない方法です。

すべての抗ウイルス剤を使用した治療に共通することですが、抗ウイルス剤を使用した治療において大切なポイントは可能な限りウイルスの増殖を徐々に抑えていくことです。GS-441524を含めた治療薬は猫伝染性腹膜炎治療初期から増量したり減量したりを繰り返したり、投薬時間を任意で変更するとウイルスの突破現象、つまり耐性ウイルスの急激な増殖につながります

通常決められた標準投与量に合わせて治療を開始し、治療終了の84日まで維持する方法が最も多く使用されています。必要に応じて治療途中で投与量を増やすことがありますが、この場合は増量後の投与量で最後まで治療を行います。

販売会社によって変わる場合がありますが、GS-441524での治療の場合は一般的に下記の投与量からスタートします。下記推奨投与量は世界的なFIP治療グループ FIP warriorsに記載されている投与量です。各ブランドの蓄積された最も安全で安定的な投与量があるため、確認が可能な場合は確認して投与してください。また推奨投与量より1.5倍や2倍と大きく外れているブランドは、ブランド変更時に混乱になりかねない為、できるだけ控えるのをお勧めしています。

モルヌピラビルの場合は製薬会社によって配合が大きく変わるため投与量を購入先に確認するようにしてください。

【推奨投与量】

  • ウェット・ドライタイプ:6mg/kg
  • 眼球症状:8mg/kg
  • 酷い眼球症状・神経症状:10mg/kg

【計算方法】

  1. 4.5kg ウェットタイプ、注射治療剤の濃度20mg/mlの場合
    •  4.5×6÷20=1.35ml
  2. 3kg神経症状、注射治療剤の濃度30mg/kgの場合
    •  3×10÷30=1ml

猫伝染性腹膜炎の経口治療剤においては、販売会社ごとに投与量は様々ですので各自で確認するようにしてください。以下4つのポイントを知っていると、薬の選択や今後のFIP治療に役に立ちます。

【経口治療剤の選択のポイント】

  • 投与量計算方法は「体重のみを見るのか」 or 「体重と症状を見るのか」
  • どのような状態であれば経口薬の使用が可能か
  • 1錠あたりまたは体重1kgあたりの薬剤主成分の含有量
  • 含有量は体内での吸収率が「計算されているのか」or「計算されていないのか」

この記事は一般的に最も安全であるとされている治療方法を紹介しています。そのため治療初期に投与量を増量して安定したら減量させるという方法で再発なしで完治した子がいることも事実です。

初めに症状を抑えたいからと増量したい気持ち、症状が改善したから薬代を節約のために減量したい気持ちは十分に分かりますが、症状が良くなったからと言って体内からFIPウイルスが消えた訳ではありません。84日かけてじっくりと治療を行い、必要な時に薬の増量を行い最後まで愛猫ちゃんの適切な投与量で治療を進めることが薬剤耐性や治療効果や決して安くはない大切な治療薬の費用を守る等様々な面で安全で良い方向に導いてくれるのではないかと思っています

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